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【京都のイベント】ハーブと漢方の世界を知る。「京都薬用植物園」の見学会レポート【京都市左京区】

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京都の四季
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今回は、京都のイベントの中でも非常にレアな「京都薬用植物園」の特別見学会(研修会)に行ってきました。

京都にある植物園といえば、「京都府立植物園」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?
実は、左京区の広大な土地に、通常は一般公開されていない幻の植物園があるのです。

園内の見学は、完全予約制。
春夏秋冬、それぞれの季節に一度だけ、見学のチャンスが巡ってきます。

見て、触れて、さらには、「味わう」ことまで。
いつもの京都旅とはひと味違う、貴重な薬用植物の世界を体感できる「京都薬用植物園」の見学会についてレポートします。

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武田薬品工業「京都薬用植物園」について

京都薬用植物園は、製薬会社の「武田薬品工業株式会社」が運営する植物園です。
ちなみに、1933年の開園当初は「京都武田薬草園」という名称でした。

「タケダ漢方胃腸薬」や「タケダ漢方便秘薬」などで知られている、武田薬品。
薬用植物の保護・保全のため、通常は、一般の方の園内への立ち入りはできません。

漢方薬に配合される薬用植物など、約3,000種の植物が保有・栽培されています。
また、この植物園に栽培されているツバキの品種は、なんと約560種。3月から4月が見頃です。

こちらが園内の地図です。「香辛料園」「漢方処方園」「民間薬園」など、他の植物園では見られないユニークなエリアが多数ありますね。
さらには、漢方処方園のなかでも、漢方処方を理解しやすいように「滋養強壮」「消化器疾患」など、処方ごとに植栽展示されています。

武田薬品工業「京都薬用植物園」の場所と外観

京都薬用植物園は、京都市左京区一乗寺の山のふもとに位置します。

植物園の最寄り駅は、京阪電車の「修学院駅」。
駐車場の利用は原則不可ですが、施設の入り口に駐輪スペースがあります。

こちらが、京都薬用植物園の正面施設(事務棟・研究棟)です。

静かな館内。受付スペースの後ろには、2017年に関西初の開花に成功した、絶滅危惧種の「ショクダイオオコンニャク」(なんと実物大サイズです!)の写真が飾ってあります。

「京都薬用植物園」の正門までの道は、なかなか厳しい上り坂でした。
歩くと良い運動になるのですが、時間に余裕を持ってご訪問ください。
(写真では勾配が分かりづらいですが、自転車で頂上まで登るには大変な坂道で、皆さん自転車を押しながら登っていました。)

武田薬品工業「京都薬用植物園」を見学する方法と開催時期

毎年ホームページにて研修会の見学募集が行なわれて、応募者が多い場合は、抽選となります。

見学会の開催は、「春・夏・秋・冬」の各季節ごとに一度だけ。
「3月または4月」「6月」「9月」「11月または12月」の中で、それぞれ2日間開催されます。
それぞれの時期によって、見学できるエリアも異なります。

午前の部(9:30-10:30)と午後の部(13:00-14:00)があり、所要時間はおよそ1時間〜1時間半。

9月の見学会では、真夏の美しい濃緑のトンネルを歩くことができますよ。

豪華なツバキ園が公開されるのは、3月または4月の見学会だけなので、きっと「春」の見学会が最も倍率が高いのではないでしょうか?
(ちなみに、前回の春の見学会にも応募しましたが、その時は残念ながら落選してしまいました…。次回の春の見学会には、ぜひとも参加したいと思います!)

武田薬品工業「京都薬用植物園」見学会のイベントレポート

今回の見学会で学んだことや、個人的に面白かったポイントについて、植物ごとにご紹介します。
植物に関する有益な情報や面白い小話をたくさん教えていただきました。

※覚え書きのため、正確に聞き取れていない可能性があります。あらかじめご了承ください。

見学は「午前の部」と「午後の部」があり、複数のグループに分かれて出発します。
1グループは10人くらいでした。それぞれのグループに武田薬品の職員さんが付き添って、園内の植物を詳しく解説してもらえます。

事務棟から外へ出ると、「散策エリア」には整備された爽やかな緑が広がっています。

京都薬用植物園で育てられている食用可能な植物は、生で食べても大丈夫なように、なるべく農薬を使わないとのことです。
「こんなに摘んでも大丈夫…?」と心配してしまうくらい、豪快にちぎって味見させてもらえます。
食べられない植物は、葉っぱをちぎって匂い比べをしたり、触り心地を楽しんだり、五感を使って体験できますよ。

こちらの植物園は、自然豊かな場所にあるので、猿が山から降りてきてイタズラするそうです。
猿はネギが好きで、よく植物園のネギが食べられたりするようで、職員さんが「元気になろうとしてるのかな〜?」とお話ししていました(笑)なんだか可愛いですね。

レトロ・モダンな明治時代の名建築「展示棟」

生薬の標本が展示されている「展示棟」は、明治時代の建築家である野口孫市さんが設計した建物。
19世紀イギリスの「クィーン・アン」という様式を基調として、和の要素を取り入れられたモダンな雰囲気の洋館です。

クラシカルな内装も美しいので、次回の記事では展示棟の建築様式などについてご紹介しようと思います。

京都の"厄除け"の植物「オケラ」

小さな菊のような花が咲く、オケラ。
京都では、火にオケラを焚べて"厄除け"とする八坂神社の「おけら参り」という行事を始め、縁起の良い植物として知られています。
京都で、オケラが厄除けとなっている由来についても教えてもらいました。

オケラは、乾燥させて火で燻すと殺菌の効果があります。
その昔、鴨川が氾濫して、家屋にカビが生えたり菌が繁殖したりと、災害により不衛生な状況になった時に、バルサンのようにオケラを燻蒸して殺菌したのだとか。
そのような背景があったために、オケラは「悪いものを寄せ付けない」「邪気を払う」というお守りのような存在になったのかもしれません。

京都府の中ではオケラは絶滅危惧種ですが、昔はわりとその周辺に生えていたようです。
かつては食用にもされていて、春に芽吹いた葉っぱを摘んで、山菜天ぷらやおひたしにして食べられていた、と仰っていました。

ちなみに、「京都の植物」の関連で言うと、祇園祭で売られる「ちまき」で使う笹の葉は、実は現段階では福井県産の笹を使っているとのこと。
そのちまきの笹を京都市内で植栽しようという取り組みが、左京区の「花背」という場所で行われているらしいのです。

爽やかなだけではない…「ミント(薄荷)」の衝撃的な使い道

薄荷飴やミントティー、チョコミントなど、日常でも馴染みのあるミント。
ミントは繁殖力が旺盛なので、地面に植えてしまうと一面に広がってしまうらしいです。「お庭に植える時は気を付けてください、えらいことになりますよ〜」と仰っていました。(植えるなら鉢植えの方が管理しやすいようです)

「ミントテロ」という、ネーミングから衝撃的な嫌がらせの話を聞きました。
なんでも、気に食わない人のお家にミントをしれっと置いて、その人のお家に繁殖させる…という手口だとか。
そんな粋な(?)意地悪の仕方があるんだ…、とびっくりしました。

植物の専門家ならではの悩みを知る「ローズマリー」

代表的なハーブの一つであるローズマリー。和名は「マンネンロウ」と言います。
今の学名は「サルビアローズマリス」ですが、つい最近までの学名は「ローズマリーオフィシナリス」だったとのこと。
なんと、植物の学名は、変更されることが度々あるらしいのです。
職員さん曰く、「オフィシナリス」(Officinalis)が「薬用の」という意味なので「学名が付けられた時代から、ローズマリーは薬用として使われていた植物なんですよ〜」と説明していたのに、つい最近学名が変わってしまったのでその説明が使えなくなりました…と、残念そうにお話ししていました。

英語の勉強でラテン語などの語源を覚えることはありますが、「植物の学名の語源から解説していたのに学名が変更になってしまった」という高度で専門的な悩みに触れ、少しカルチャーショックを受けました(笑)やはり、一つのことを突き詰める人は素敵ですね。

食用から美容まで。用途多様な「唐辛子」

鷹の爪やハバネロなど、辛味のある香辛料のコーナーもありました。
危険なエリアで、「ここで使ったハサミをほかのエリアで使ったら大変なことになります」と仰っていました。

身体を温める効能を用いて湿布に使われたり、唐辛子の刺激を利用して、不審者や熊の撃退に使われたりと、用途は多岐に渡ります。
「辛いものを食べたら唇が腫れる」という性質を利用した、唐辛子に含まれる刺激性の物質「カプサイシン」を含んだリップ美容液も人気らしいですよ。

一石二鳥のハーブ「レモンバーム」

レモングラスやレモンバームなど、形状や効能は異なりますが、レモンの香りがする植物だけを集められたコーナーがありました。
ハーブティーやレモンティーに入れると爽やかな香りを楽しめるハーブです。
また、レモンの香りは、実は虫が嫌がる香りらしく、「シトラール」や「シトロネラ」という自然成分が入った虫除けがよく売られているようです。
レモンの香りを堪能できて、虫除けにもなる、一石二鳥な植物ですね。

砂糖の200倍の甘さを誇る、天然甘味料「ステビア」

葉の部分が甘味料として使われるステビア。その甘さは、なんと砂糖の200倍。生の葉っぱは、噛めば噛むほど甘さが出てきます。「コカコーラライフ」という健康志向のコーラにも、ステビアが使われていたとのことです。
また、生薬の甘草(リコリス)も、砂糖の30倍もの甘さがあるらしいです。

ミニチュア版のサヤエンドウ?「ゴマ」

日常の食事でも大活躍のゴマ。実は、ゴマは炒ることで初めていつもの味になるのです。
生の果実をかじっても、ゴマのあの香ばしさも味もありません。しかし、実際に生えているゴマの草から実を摘んでみると、見た目は「ゴマ」そのもの。

サヤエンドウのようにサヤを剥いてみると、ごまが一列に並んでいて可愛らしいです。
植物としてのごまを初めて見たので、何だか不思議な気持ちでした。

有用だけど危険な植物「トウゴマ(ヒマ)」

ヒマシ油が採れるトウゴマは、非常に強い下剤としての効能があります。
効果が強いため、現在では主に工業用のオイルの原料として使われているようです。
トウゴマの種子を触らせてもらいましたが、取り扱いには注意するように言われました。

海外ドラマ『Breaking Bad』で、科学者の主人公ウォルター・ホワイトが、トウゴマから抽出されたリシンという毒を犯罪に使う名シーンを思い出しました…。

苦味を活用して育毛剤に?「センブリ」

よく芸人の罰ゲームで使われる「センブリ茶」のセンブリ。
残留性の長引く苦さで、白い花の部分が特に苦いとのことです。
試しに味見してみましたが、飲み物や甘いものなどの口直しがないと厳しい苦さでした…。
千回振り出し(煎じ)てもまだ苦い、という由来から「センブリ」という名前が付いたそうです。

センブリは、その苦味を活用した「苦味健胃薬(くみけんい)」という、胃の働きを促進する漢方で知られていますが、なんと、育毛剤の成分としても使われているんです。
センブリのエキスには血流の促進効果があり、その効能を育毛に職員さんの知人の研究者が「ネズミの毛に塗ってフサフサになるのか」という実験をしていたのだとか。

博識な職員さんが、一つひとつの薬用植物の特徴・効能を分かりやすく解説してくださるので、楽しく見学しながら知識を得ることができました。

おわりに

今回は、京都市左京区の「京都薬用植物園」の見学会についてご紹介しました。
いかがでしたでしょうか?

見学中に、職員さんの頭にカマキリが乗っかるという珍事件も発生。
漫画『女の園の星』の小林先生のようなことがリアルに起こっていました。

今まで「武田薬品工業株式会社」については、ベンザブロックやアリナミンなどの製品がある、という程度の知識でしたが、漢方や薬品のルーツに触れることで知らない世界を学び、充実した時間を過ごすことができました。

とてもおすすめの貴重なイベントなので、皆さんもぜひ、見学会に応募してみてくださいね。

名称    武田薬品工業 京都薬用植物園       
          (たけだやくようこうぎょう) 
住所    〒606-8134 京都府京都市左京区一乗寺竹ノ内町11 
電話番号   075-781-6111
駐車場    原則利用不可(駐輪場あり)
公式サイト http://www.takeda.co.jp/kyoto/index.html?_ga=2.158846906.1426223262.1541745809-1338439147.1541745809

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